【本田雅一のAVTrends】「Powerbeats Pro」は、左右分離スポーツイヤフォンの意外な優等生 - AV Watch

Beatsは、そもそもが音楽アーティストでプロデューサーでもあるDr.Dreが立ち上げたブランドということもあったが、そのコンセプトやアイコニックなデザイン、レディ・ガガやディディといったアーティストとのコラボレーションなどで攻めのマーケティングを行なうと、ソニーやゼンハイザーといった伝統的なポータブルオーディオのブランドが、当時ことごとく古臭く見えたものだ。

もっとも、最初のモデルが登場したのは2008年のこと。当時は若年層を中心とした新しい世代のユーザーが支持する新興メーカーだったが、あれから10年以上が経過し、その間にはアップルによる買収という話題もあり、ポータブルオーディオ製品のブランドとしてはすっかり定着した。

実は初代モデル(Monster Cableが開発・販売したStudio)が登場した際、なぜかなんのコンタクトもないのに我が家に製品が届いたものを評価したことがあったが、当時は良い意味でも、悪い意味でも荒削りだった。

ノイズキャンセリング機能は調整が甘く、装着具合によっては盛大なハウリングが発生。音質バランスは典型的なドンシャリで、とりわけ緩く、遅く、ボリューミーな低音な「Studio」という名前に戸惑ったことを憶えている。結局のところ、初代Studioを評価記事にすることはなかった。

【本田雅一のAVTrends】「Powerbeats Pro」は、左右分離スポーツイヤフォンの意外な優等生 - AV Watch

しかし10年以上を経過して、Beatsの製品もずいぶん大人びた音を出すようになったようだ。

新モデルPowerbeats Proは音域バランス良く、心地よい音質で音場が自然に拡がる。情報量がとりわけ多いわけではないが、聴き疲れするような付帯音もなく、またミッドバスを強調してビート感を演出するような悪癖もない。

「Powerbeats Pro」(上)と、Apple「AirPods」(下)

低域はタイトではなく、ゆったりと鳴る傾向だが、決して量的に過多になることはない。高域から超高域にかけて、バランスドアーマチュアのような繊細な情報はない。しかし、中域から高域にかけてのふくよかで歪み感の少ない音は、何かの作業をしながら音楽を楽しむ際に最適だろう。

Powerbeats Proはスポーツ、フィットネスのシーンで使われることを想定した製品だが、日常的な音楽を楽しむシーンでも充分以上の音質を持つ。解析的に音楽ソースを分析するのでなければ、リラックスして音楽そのものを楽しめる。Beatsのイヤフォン/ヘッドフォンで音質的に納得感を感じたのは初めてのこと。

左右イヤフォンが完全に分離している「True Wireless Stereo(TWS:完全ワイヤレス型イヤフォン)の中では」という条件はあるが、音質面で残念に思うことはないだろう。