Engadget Logo エンガジェット日本版 50万円の折りたたみスマホは誰向けか。FlexPai 2 をベースに本革張り(山根博士)

海外ではファーウェイが新型折りたたみスマートフォン「Mate X2」を約30万円(17999元)で発売したばかりですが、さらに高価な折りたたみスマートフォンが登場しました。主に中国で高級スマートフォンを展開するVERTUの「Ayxta Fold」(アクスタ・フォールド)です。VERTUは以前は1000万円や1億円といった、貴金属やダイヤなどを採用した端末を出していましたが、2017年に一度倒産し、現在は中国資本でVERTUブランドの製品を出しています。

Ayxta Foldはディスプレイを開くと7.8インチ、閉じると5.5インチ+5.4インチの両面が使える折り畳みスタイルで、外側に折りたたむデザインとなっています。ファーウェイの初代の折りたたみスマートフォン「Mate X」を同じ形状です。

このAxyta Foldの本体デザインをよく見ると、すでに中国で販売中の別の製品とそっくりなことがわかります。実はAxyta Foldはフォルダブルディスプレイ開発メーカーであるRoyoleの2世代目の折りたたみスマートフォン「FlexPai 2」をベースモデルとしています。Axyta FoldはFlexPai 2の背面を本革張りとし、ロゴをつけかえてVERTU初の5G対応・折りたたみデザインのスマートフォンとして発売されたわけです。

Royoleは2018年にサムスンに先駆けて折りたたみスマートフォン「FlexPai」(初代)をリリースしましたが、樹脂ボディーで折りたたんだ時のスキマがかなり大きく、試作機のような仕上げでした。しかしFlexPai 2はボディーを金属製とし、折りたたんだ時もスキマの無い改良されたディスプレイを搭載。本体の質感は高く、そのままでも十分高級なモデルとして通用します。VERTUとしてはFlexPai 2をベースにした新しいジャンルの製品を投入し、中国の富裕層にアピールしようと考えているわけです。

Royoleはスマートフォンメーカーではなくディスプレイ開発を主に行っており、スマートフォンの販売はあまり得意としていません。オンライン販売を主としていますが、スマートフォンメーカーとしては無名であり、中国での販売もうまくいっていないと思われます。FlexPai 2の価格は9988元、約16万5000円なのでGalaxy Z Fold2(約20万円)より安いものの、無名メーカーのこの価格の製品に手を出すのは勇気がいります。

Royoleとしては高級ブランド端末を手掛けるメーカーと組み、最新技術・高級製品として別ブランドでの販売を積極的に展開しようと考えているのでしょう。実はVERTUより早く、2020年11月には中国国内で高級スマートフォンを展開しているKretaと提携も行っています。KretaからはFlexPai 2ベースの「V11V」が発売されています。

V11VはAxyta Fold同様、本体背面が本革張り仕上げとなっており、ロゴを表示する部分には18金のロゴマークが貼り付けられています。また黒に加えて赤の革張りモデルもあり、Royoleのオリジナル製品やVERTUのものとはイメージがかなり異なるバリエーションも提供しています。価格は19999元、約33万円とベースモデルのFlexPai 2の2倍の価格に設定されています。

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ここまで高い折りたたみスマートフォンがどれくらい売れるかは未知数です。しかしサムスンはGalaxy Z Fold2(定価1999ドル、約21万円)のぶらんどこらぼもでるとして「Thom Browne Edition」を世界限定5000台、3299ドル(約35万円)で発売しましたがあっという間に完売となりました。日本では税込み41万4700円とグローバル価格より高い価格にも関わらず、こちらもすぐに売り切れました。

実は筆者はファーウェイの「Mate X2」にポルシェデザインモデルが同時に出るのではないかと期待していました。ファーウェイはMateシリーズ各モデルにポルシェデザインとコラボしたバリエーションモデルを発売しており、2020年秋には「PORSCHE DESIGN HUAWEI Mate 40 RS」を発表しています。Galaxy Z Fold2のThom Browne Editionが高い価格にも関わらず売れたことから、折りたたみスマートフォンはブランド品として高価格で販売しても確実に一定数の販売が見込めます。もしポルシェデザインのMate X2が出ていたら、価格がいくらになったのかも気になります。

サムスンは今年「Galaxy Z Fold3」をリリースする予定です。今回もThom Browne Editionが用意されるでしょう。それぞれの価格がいくらになるかは不明。Snapdragon 888を搭載したスマートフォンを中国メーカーが10万円以下で次々とリリースする昨今、サムスンにとって折りたたみスマートフォンは10万円以上の高い価格で売ることのできるハイエンドかつ高級モデルモデルとして貴重な存在です。あえて価格を安くすることは無いでしょう。廉価版の折りたたみスマートフォンが出てくるという「噂」もありますが、誰もが気兼ねなく使えるような耐久性の高い折りたたみディスプレイが商用化されなければ価格を下げることは難しいでしょう。

さて2021年に入ってから、アップルも折りたたみ式のiPhoneを出すのではないかといううわさが出ています。しかし今の折りたたみディスプレイの品質では、「誰もが使う」iPhoneに搭載することは無理でしょう。iPhoneは今や先進国で最も売れているスマートフォンの1つで、ユーザー層は大きく広がっています。iPhoneにケースを装着して大切に使う、というユーザーばかりではありません。今の折りたたみスマートフォンは落下時のディスプレイ強度がまだ十分とは言えませんから、アップルが採用するとは考えにくい──と筆者は考えます。

サムスンやファーウェイが折りたたみスマートフォンを出すのも携帯電話の進化を考えれば当然で、ユーザーニーズの先取りをしていると考えられます。iPhoneもディスプレイサイズをこれ以上大きくするのであれば、縦に折りたたむモデルが出てきてもおかしくないのです。あるいは動画ファーストの5G時代だからこそ、iPhoneを左右に開くとiPad miniスタイルになる横開き式のモデルが出てくる可能性も十分あります。

折りたたみスマートフォンがニッチな製品だからこそ高級モデルの存在価値も十分あるのです。また折りたたみスマートフォンの価格が割高なのは、数を出すことよりも特定のユーザーをターゲットにした製品としてメーカーが販売しているからです。

数年後、折りたたみ式のiPhoneが出てくるとすれば、そのころには中国メーカーも全社が同じ形状の製品を出しており、折りたたみディスプレイが「気を使わなくとも」使用できる十分な強度を持った品質になっていることでしょう。おそらくiPhoneもiPadも数年後は今より価格は下がっているでしょうから、相対的には折りたたみiPhoneは高い価格かもしれませんが、今のサムスンやファーウェイの製品よりはかなり安くなると考えられます。いつになるかはわかりませんが、スマートフォンの今後の進化を考えると、折りたたみiPhoneがいずれ登場するでしょうね。