これぞ“オーディオスマホ”「Xperia 1 III」の有線出力や360 Reality Audioを聴く

嬉しい3.5mmイヤフォン出力搭載

今回のメインであるサウンド面をチェックしよう。まず注目は3.5mmイヤフォン出力を備えている事。ご存知の通り、イヤフォン出力は昨今のスマホから消えつつある、貴重な存在。ワイヤレスイヤフォンの人気を考えれば「仕方ないのかな」と思う一方で、お気に入りの有線イヤフォンが使えず寂しい思いをしている人も多いだろう。

もちろん、イヤフォン出力の無いスマホでも変換ケーブルやポータブルアンプなどを接続すれば有線イヤフォンも使えるが、そうした別パーツを持ち歩かなくても、スマートに有線イヤフォンが使える便利さは、やはり使ってみるとありがたい。

嬉しい3.5mmイヤフォン出力搭載

また、“単にイヤフォン出力をつけました”というわけではなく、その音質にこだわっているのがオーディオメーカーのソニーらしいポイント。スマホは、非常に限られた空間にノイズを発する様々なパーツを詰め込んだ機械だが、そうしたノイズが音に影響を与えないように対策も徹底しているそうだ。

新機種のXperia 1 IIIではさらに、最大音圧が前モデル「Xperia 1 II」と比べて約40%向上。より大音量で音楽を楽しむことができ、能率の低いイヤフォン/ヘッドフォンも鳴らしやすくなった。ちなみに、前モデルのXperia 1 IIは、オーディオビジュアルアワードの「VGP2021」で、そして新機種のXperia 1 IIIも「VGP2021 SUMMER」で、どちらも「スマホAVクオリティ大賞」を受賞。評価されたAV機能をさらに進化させたのがXperia 1 IIIというわけだ。

これぞ“オーディオスマホ”「Xperia 1 III」の有線出力や360 Reality Audioを聴く

実際に有線イヤフォンで音を聴いてみよう。標準の「ミュージック」アプリで、「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」の96kHz/24bitファイルを再生する。ちなみに、このアプリはプラグインなど追加せずにハイレゾの再生が可能だ。

冒頭、向かって左側のアコースティックギターのソロから音楽が始まるが、もうこの時点で音の良さがわかる。静かな音場に、ギターの響きが波紋のように広がっていくのだが、その背景にある“音の無い空間”が“しっかりと静か”なのだ。ノイズの多いスマホだと、“音の無い空間”がザワついて、楽器の音が不明瞭に聴こえてしまう。Xperia 1 IIIでは、無音部分がしっかりと無音で、音の無い空間にスッとギターの音が立ち上がる。音場に浮かぶ楽器の輪郭がクリアに聴き取れ、立体感があり、生々しく聴こえる。

ギターに続いて入ってくる女性ボーカルの声もナチュラル。人の声は、日常生活で聞き慣れているので不自然な音だと違和感を感じやすい、“ごまかしの効かない音”だが、Xperia 1 IIIは色付けが少なく、非常にリアルだ。

関心するのは1分過ぎから入ってくるアコースティックベースの低音。これが「ズーン」としっかり沈み、ちゃんと“低い音”が出ている。中低域を膨らませた“なんちゃって低音”ではない。

深い低音の中にも、しっかりと芯がある。ベースが「ブォーン」と不必要に膨らまず、適度にタイトな締りがある。分解能が高いため、「ズーン」という低音が大味にならず、低い音の中に、弦がブルブルと震える細かな音が含まれているのが聴き取れる。

SN比が良いだけでなく、イヤフォンをドライブするアンプの駆動力が高くないと、こういう低音は出せない。これは、小さな筐体にアンプまで内蔵する完全ワイヤレスイヤフォンが苦手とする部分であり、有線イヤフォンの良さが発揮できている。