韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』が問いかける「子どもを見殺しにする大人社会の欺瞞」

『イカゲーム』の全世界的なヒットが記憶に新しい。そのデスゲーム・ドラマに迫る勢いで快進撃を続けているのが同じくNETFLIXで配信が開始されたゾンビ・ドラマ『今、私たちの学校は…』だ。世界中が熱狂するのはなぜか?「ただの学校舞台のゾンビアクション、というマス向け作品に終わらない」と語るジャーナリスト治部れんげさんが、作品に流れるメッセージを読み解く。次に来る韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』が問いかけること

韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』が問いかける「子どもを見殺しにする大人社会の欺瞞」

グロテスクで刺激が強いだけのゾンビ・ドラマではない

Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』独占配信中架空の高校を舞台にしたゾンビもの韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』が世界的にヒットしている。噛まれた人が次々とゾンビ化する中、仲間と協力し創意工夫によりサバイバルする高校生たちを描くアクションだ。本作を視聴するかどうかを分けるのは「怖いもの」への耐性だろう。私自身は血が出るシーンが苦手でホラー作品は全く観ない。韓国ドラマは最近2年ほどよく観ているが、これは観ずに終わると思っていた。

Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』独占配信中けれど、たまたま仕事で疲れ切ったある日「いつもと違うもので気分転換しよう」と考え、中学1年生の息子を誘った。「ねえ、ネトフリの学校舞台でゾンビのやつ、観る?」二つ返事で付き合ってくれた息子と共に、怖いものが大の苦手な娘に聞こえないよう、イヤホンをつけて並んで観ながら12話を3日で完走してしまった。これは、単なるグロテスクで刺激が強いだけのドラマではない。※これより、ストーリーに触れています。前情報を入れずに本作をご覧になりたい方は、観賞後にお読みください。

マス向け作品の表層を一枚めくると現れる、痛烈な社会風刺

話の構造はオーソドックスである。ゾンビを生み出したのは、ある父親の執念だ。壮絶ないじめに遭う息子を救うため、父親は息子を強くするウイルスを開発した。制御に失敗したゾンビウイルスが息子を怪物に変え、ウイルスは瞬く間に全校、全市へと拡散していく。科学の暴走に同情を引く親心をミックスして視聴者を引き込む。極限状態で人間の本性が表れるのは、過去に何度となく描かれてきたパニック映画の十八番である。ゾンビになりたくない一心で、他人を犠牲にする行動を取る人々。平時にいじめを隠蔽した高校の校長は、校内をゾンビが埋め尽くす阿鼻叫喚の中、生徒を盾に自分が逃げようとする。プライドが高くて自分の非を認められない生徒は、共に身を隠している友達を平気で裏切る。

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